ロサンゼルスの有名エアリアルスタジオに、The Loft (Womack and Bowman) がある。プロパフォーマーとしてクルーズ船、TV、映画、大規模なライブイベントなど世界中のステージを経験したBrett WomackとRachel Bowmanが作ったスタジオで、単なるフィットネスとしてのエアリアルではなく、プロフェッショナルな芸術としてのエアリアルを確立することを目的にしている。
技を成功させることよりも、技と技の繋ぎ、フローを重視すること、そして音楽の解釈や感情の乗せ方に拘るスタイルで、私も何度かセッションに参戦させて頂いた。
(YouTubeで私が勝手に参考にしていた男性エアリアリストに偶然スタジオで出会って盛り上がったのもいい思い出だ)
スタジオの立地がロサンゼルスの中心地 (や私の家) からかなり遠いというアクセスの悪さが (私にとっては) 欠点で、通ったなんて言えるほど足を運べなかったが、実はスタジオ現地でのレッスンやトレーニングに限らず、世界中の学習者がオンラインで学べる教材も提供している。
その中でも自分が演技構成・コレオを作る時に参考になった “Act Up! Challenge” というオンライン教材を紹介したい。動画解説付きで、無料教材なのでどなたでも (英語に苦手意識がなければ) 気軽に使えると思う。
(私は ここ↑から登録して無料で教材が貰えました)
Womack and Bowmanでこれまで15年以上に渡って手掛けてきた全てのエアリアルの演技構成・コレオはこの教材で紹介されるステップを踏んで作るとのことで、詳しくは教材に譲るが、大まかに言えば
- 技を決める (覚える)
至極当然だが、まずは演技に入れたい技の基本形を身体に刻み込む。
数回成功した程度では足りない。手、腕、腰、胸、脚、肩—つまり身体のあらゆる箇所がいつどのタイミングで空間のどの点にあるべきか。それぞれの技を20回くらいは成功させて肉体の記憶にする。 - 流れ (Flow) を作る
次に行うのは編集作業。
ステップ1で覚えた基本形に、何か足せる装飾や、削る無駄は無いだろうか?
例えば、手の握り直しを1つ減らすことはできないか? 巻き技の途中に綺麗なポーズを足すことは? そうして個々の技にアレンジを加えながら、複数の技を、流れるような一本の線に繋げていく。
私の場合、インスタやYouTubeで集めた、技と呼ぶには細かすぎる接ぎ木のようなアレンジを色々と技の前後に足しては引いて、コラージュのように組み合わせ統合していくのがこのフェーズ。 - 音楽に合わせる
まずは地上で楽曲を何度も聴き、シルクの上での自分の動きを思い描く。クレッシェンド、クライマックス、あるいは静寂や余韻など、楽曲の構成を解剖し、理解する。
イメージが結ばれたらシルクに登り、ステップ2で編み上げたフローをリズムの枠に落とし込んでいく。具体的には、ダンスレッスンのように 1, 2, 3, 4 とカウントを取りながら、その拍に合わせて動作を一つずつ配置していく。(もちろんワルツなら 1,2,3 というように、曲が持つそのリズムに動きを当てはめ、固定していく)
こうすることで、演技は一旦客観的な再現性を持ち始める。 - 感情を乗せ、芸術性・独自性を載せる
ステップ1-3を終えて、つまり技のフローが完成し楽曲のカウントと合致したら最後に行うのが、その演技を自分にしか語れない物語にしていくこと。
自分自身の感情が最も共鳴するストーリーを、コレオ全体に潜ませ、息づかせる。それは他者に説明する必要のない、極めてパーソナルな物語で構わない。 (むしろ物語が個人的であればあるほど、動きに宿る気持ちは熱くなる)
演技構成を、ただの技、技、技の連続ではなく、芸術作品に高めていくために、意味を与える。
私なりの理解によれば、エアリアルを技術力や美しさだけでなく、ありのままの感情を示す手段にする。
ということらしい。(私の偏見も混じってしまったが…)
内容は至極真っ当でシンプル、あるいは教科書的なのだが、システムとしては15年のスタジオ運営経験から洗練されていて、この流れで作っていれば間違えることは無いと思う。
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実際に私は自分の演技構成・コレオのほぼ全てを自分で作っていた (コレオグラファーに依頼しなかった) ので、このAct Up! Challengeも参考に、またどこかで紹介するかもしれない私独自の勝手なメソッドに沿って編み上げていた。
もちろんフロアワークを含めて舞台経験豊富なコーチを頼り、大いに壁打ちや相談をさせてもらうという贅沢な助けは借りたが、自分の演技は自分で納得がいくまで作り込みたいという欲求には抗えなかった。
私のような我が強いタイプのエアリアリスト諸氏 (今、何人かの友達の顔が私の脳裏をよぎっている..) にとって、このような教材は、自分の譲れない拘りを煮込んで料理するための良い道具になるかもしれない。
ちなみに個人的に一番参考になったのはカウント毎のモーションを細かく釘打ちして決めるステップで、それまで何となく音楽に合わせて演技をしていた所から、カウント毎の動きを固定して演技をするようにしてからは演技がかなり安定して大幅に良くなった。そこまで決めると練習だってしやすいし。
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もちろんより即興的に、好きな音楽を流しながら適当に何回か踊ってみて、その中で良さげだったものを採用するという、より感覚的な構成の作り方もあるだろう。
私が尊敬するエアリアリストには、いつもそうやって即興的になんとなく構成を作るという人もいた。人によって才能があることも培った技術も違えば、エアリアルをやる理由だって違うことだろう。自分に合ったスタイルというのもそれぞれあると思うので、何も逐一従わずに、自分なりのやり方で作っていいのだ。
それに構成・コレオは何度完成したと思ったところで、どうしても気になる場所が出てくる。そして時には微調整を、時には大手術を行いながら、盆栽を仕立てるように (あるいは女性が鏡の前で理想の1ミリを追い求める、一生納得がいかないらしい前髪のように) 美しく整え直していくことになる。
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