目に★が宿っている人の正体

2022年、JAXAの宇宙飛行士選抜試験をひとつ、またひとつと突破し、都度次のセレクションに向けて腐心していた後半過程にて、審査される特性の中に「表現力」という項目があった。(ちなみに割といいところまで行った。もちろん本当は月ミッションに参戦して380,000 km先の夜空から地球のみんなに手を振りたかった。。)

表現力なんてどうやって鍛えるねん。

と思った私は、この人はトークや表現力がひとつ上のレベルだなと思う友達に聞いてみることにした。
ピアニストという点では私と同じだが、私と違ってパブリックスピーキングも極めて上手で、ステージ上でもこれはプレゼンスというか華があるだろうなと感じる友達だった。

彼女が私にくれたアドバイスは以下。
(本人了承済でそのまま掲載 (※有料級))

ありきたりなことばかりでしたら申し訳ないのですが…

・準備練習できることはしきったのであとは本番を楽しむだけ、という気持ちになれるまで準備を重ねる
→本番余裕が生まれて遊び心などプラスアルファのことも発揮しやすくなる。
(逆に準備不足だと、あれ上手くできるかな…という不安から終始抜け出せず全体的にパフォーマンス下がる)

基本的に練習でできたこと以上のことが本番で発揮できるようなミラクルは存在しないので、練習で百発百中レベルまで精度を上げておくと、あとは楽しむだけ!の境地に至れる気がします。
地道ですが、その自信と余裕が輝きや華につながると思います。

・その場を共有している人たちとの相互作用による化学反応を楽しむ。
バンドはみんなで演奏するので特に意識しやすいかもですが、自分の良い所見せよう、だけをずっと考えているのではなく、周りのメンバーと目を合わせたり微笑みあったりしながら、気持ちを高め合うことで、見てる方も楽しくなると思います。

相互作用はお客さん(=今回でいう審査官?)との間でも意識できると思います。
「今この場にいるみんなでこの空気感・世界観をを作り出して共有しているんだ」という感覚。

・本番は無意識にも緊張していてこわばっているので、表情や身振りは少し大きすぎるかなくらいの方が周囲に伝わると思います!

・私の場合は腕時計やアクセサリーを始まる直前にキーボードの脇に置くとか、ルーティンがあると平常心を取り戻して力を発揮しやすくなります。お守りに感じるものを身につけておくとかでも良いと思います。


→全ては「余裕」というキーワードに繋がっている気もします!余裕を生み出すためのこと、余裕があるからできること。

音楽セッションでの経験をベースにした宇宙飛行士の選抜試験に向けたアドバイスなのに、まるでエアリアリストのために書かれたアドバイスのようだ。
もうここで記事を締めくくりたくなる欲求に駆られるが、それでは余りに芸がないのでエアリアリストの読者のために続けます。

以前 100回の通し練 で触れた通り、私は自分のエアリアルの演技にチェックポイントを100ヶ所定め、通し練をする度に動画で自己採点していた。これを厳密に100回の通し練に対して行うと、100回中何回成功したかという計算により、1%単位で成功率のデータが取れることになる。

だが実際にこれをやってみると、通し練を繰り返すうちに「もうここは完全にマスターして100%できるな (=採点不要だな)」という箇所がどしどし出てくる。そういった箇所は採点項目リストから削除していき、代わりに少しでも気になる新たな箇所を追加していくことに自然となる。

そうすると面白いことに、最初の頃は誰が見ても明確な失敗とわかる「そもそも曲とタイミングが合ってるか」とか「シルクの巻き方を間違えてないか」みたいな項目が並んでいた100項目のチェックリストがどんどんマニアックな感じになっていき、100回の通し練を終える頃には「ここでシルクを取りに行く右手の動きに表情がついているか」「この時の視線が次の動きを期待させる方向に流れているか」みたいな細かい感じになっていく。

表現力 (ソフトスキル) は、こうして技術 (ハードスキル) が無意識になった先で解放される。
そしてライブセッションでは、目の前の観客と目を合わせ、声援を聴き、あらゆる可能な信号を送って気持ちを高め合い、音楽とエアリアルを心から楽しむこと。これも意識が技術から解放された先に初めて、心からそのまま溢れ出す。
これが特別な才能のない私が掴んだひとつの答え。エアリアルにおいても、これが余裕から生まれる、練習可能な表現力や華の正体だと思う。

表現力、華、存在感といったものを、もうどうしようもなく持っているような「ずるい」人には覚えがある。スポ根チックな練習量なんか関係なく、この人は最初からそれを生まれ持っているのでは?と思わずにはいられないような。
無敵の一番星が目に宿っているものだから、どこにいてもすぐにわかる。眩しすぎてサングラス越しでないと直視できないような人。

だが一見練習なしにハートに刺さる表現を届けてしまう人がいるとしたら、それは別の場所で観客相手に表現をすることの呪いに既にかかっていた人なのではないかと今は思う。
例えば別の採点型スポーツや舞台芸術、人気商売、あるいは私生活の中で。

その人の生き様は全て演技に現れる。

そして以前には、華美で退廃的な生き様を華に昇華する奇人変人の前には、数多凡人の私が紡ぎ出せるどんな個人的な苦労も祈りも芸術的達成も色褪せて見えてしまう。…などと思っていたのだが、やっぱり平和なアプローチが一番だよね。

※宇宙飛行士選抜試験の表現力評価は無事通過しました。


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